人生を変える戦略的休学とは?数々の休学生を海外に送り出したe-Education代表・三輪開人さんにインタビューしてみた

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みなさん、大学生活を「休学」するという選択肢を考えた事ありますか?

現在は留学やインターンのハードルが比較的低くなったため、大学生活を1年伸ばすという選択をとる人が徐々に増えてきたかと思います。

しかし、その1年間を本当に「人生を変えるため」の時間にするためにはどうすればいいのでしょうか?

本日は、そんな疑問をクリアにするべく、ぼくが大学に入った瞬間からお世話になっているNPO e-Educationの代表・三輪開人さんにお話を伺います。

テーマは「人生を変える“戦略的休学”」です。

 意義のある休学とは

NPO e-Educationは活動を開始してから今まで30人以上のインターン生を送り出している、途上国の教育課題に挑戦するNPOです。そのインターン生のほとんどが大学を半年もしくは1年休学して海外に飛び立ちます。

インターン生が自らブログ等で休学の経験を語っていることは多々見かけますが、休学生を見守るプロといっても過言ではない代表の開人さんからみた休学の意義について本日はお伺いしたいと思います。

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赤いバングラデシュの伝統衣装パンジャビで有名な開人さん。通称"Red man"

ーー本日はよろしくお願いします!まず、e-Educationのインターンは募集要項にもあるように原則「休学」なのはなぜでしょうか?

いくつか理由はあると思うけれども、ひとつ大きな理由としてはやっぱり途上国で活動する上で、出来る限り長い間現地の人たちと密なコミュニケーションをとることが大事だと思うんだよね。

中には大学に通いながら途上国で活動してみたいっていう子たちも結構いたんだけれども、途上国で日々変化・進化していくプロジェクトと同じスピードで成長していく、途上国のパートナーの成長を一番近くで感じられる方法は、一旦大学から離れて彼らの隣で切磋琢磨するっていう方法が一番じゃないかなと思うからこそ、e-Educationは休学を前提にしてる。

あと、なんかひどい言い方に聞こえるかもしれないけれど、やっぱり「言い訳をしない」環境を作ることは大事だと思っていて。例えば、親から許可を得たり、教授から承認をもらうのには勇気がいる。サークルや部活の仲間には迷惑をかけるかもしれない。それでも、やっぱり自分はこれをやりたいんだっていう明確な道を自分で決める行為には確かな意味があると思っていて、休学をするという選択肢を考えるだけでも十分価値があると思う。

 ーー「言い訳しない」は確かにわかる気がします。

そうだね。「言い訳」というよりは、やっぱりその他の選択肢と比較することが大事かな。大学で友達と過ごす時間もすごく大事だし、彼らから1年遅れて卒業するといったリスクとかも含めて、休学という選択肢を天秤にかけることになる。それでも、やっぱり海外で挑戦したい、e-Educationで頑張って見たい、って思ってもらえるようになるこのプロセスにはすごい意味があると思っている。

だから、e-Educationに応募してくれた子は、倍率がすごく高いこともあって、必ずしもうちでインターンができるわけではないんだけど、それでもやっぱり休学をする、自分で自分の人生を決めるんだ、って考えて決断することには、個人的には凄く価値があると思うんだよね。

 休学っていうこと自体は、あくまで手段の一つでしかないけど、自分で自分の選択肢をえらびぬくって行為は凄く人生で役立つと思う。就職活動も本当に選択の連続だし、社会人になればもっと多くの選択肢に迷う。そんな時、自分で考え抜いて、「これだ!」って思う道を選んだ経験はきっと将来役に立つはず。

 ーー確かに自分で考える時間は本当に多いですよね。

 そうだね。あと、やっぱり異なる国、異なる文化の人たちのことを知ろうとすると、どうしても時間はかかってくるもの。例えば青年海外協力隊は2年間という期間なんだけど、それでも「時間が足りなかった」という人だっている。2年から比べると休学1年は半分しかないし、それで本当に途上国のことを理解できるかはわからないけど、時間をかけるからこそ見えてくるものもきっとある

 少なくとも、同じ空間で、同じ時間の流れを一緒に感じることはいつでもできることじゃないし、途上国の人たちと過ごす時間に一秒だって無駄な時間はないと今も信じているよ。

ーーe-Educationで休学したインターン生は渡航前と渡航後でどんな変化がありますか?

概ね「良い顔になって帰ってきたな」と思うかな。

e-Educationの場合、必ず渡航する前に、自分がインターンとして海外に行く目的ははっきりしていて、最初ははっきりしていなくても、何度も面接を重ねるうちに休学の目的も固まってくるんだよね。

中には自分の強い部分を伸ばしたいって言う学生もいれば、逆に自分の苦手なところを克服したいって言う学生もいる。一人一人が自分が渡航する前の気持ちを何度も確認して、それを大事に海外で一生懸命頑張って帰ってくるからこそ、「あいつに勝った」「あの人よりも成長した」とかじゃなくて、自分をしっかり超えることができたっていう「良い顔」になって帰ってくるんじゃないかと思う。

もう少し踏み込むと、どちらかと言うと苦手な部分を克服してきた学生が多い。具体的に言うと、これまで自分で全部何とかしてきた子が、自分の無力さであったり力不足を感じながらも、誰か他の人に頼って頼りながらその何か大きなことをなす経験をしたり。逆に、自分一人で努力することが中々苦手だった子が、あの手この手で必死に足を動かして何かを成し遂げたりとか。

これまでできなかったことができるようになる、もしくはこれまでその気づかなかったことに気づく。そういった変化が、すごくe-Educationのインターン生らしいという風に感じているかな。

ーー自分と向き合うイメージが多いんでしょうか?

中国のことわざで「異国有我」ていう言葉があるんだけど、異なる国にいるからこそ、自分が見えてくるっていう凄くぴったりな言葉がある。

途上国の人たちが自分と違うからこそ、自分がどんな人間なのかって見えてくること多い。それから、目の前の人にアドバイスをすると、なんか自分に対して言ってるような感覚になる事ってすごく多いんだよね。

「時間を守ろう」とか「締め切りを守ろう」とか。彼らにとって必要なことだろうと思ってアドバイスはするんだけど、なんか本当に鏡のように自分に言葉が返ってくる瞬間って、国際協力の業界ではすごく多いような気がする。自分が何かを教えてあげる、情報を伝えるからこそ、自分自身も学んで成長するっていうのはやっぱり国際協力の醍醐味な気がするね。

ーー次に短期のボランティアではなく、学生時代に長期で国際協力に取り組む意義とは何でしょうか?

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バングラデシュのパートナーBacbonのみんなと


これには結構明確な答えがあって。

国際協力に携わる上で、結構大事な要素の一つが「原体験」だと思っているだんよね。やっぱり国際協力に関わりたい関わり続けたいって思うのは、途上国の人たちのことを実際に知ってる、彼らと肌で触れ合っきたから、っていう人が多いような気がする。

一方、社会人になって途上国の人たちと長い時間、一緒の屋根の下でご飯を食べるって言うことはなかなか簡単に実現できることではない。だとすると、やっぱり社会人として働き出す前に、途上国を知る、しっかり手触り感を持って彼らのことを考える、というのは大学生だからこそできることなのかなという風には思うね。

自分の場合、半年間東南アジアをぐるぐる回りはしたんだけれども、何か特定の目的があって一つの場所にいる、もしくは何らかのプロジェクトを現地の人たちと時間をかけて一緒に作るっていう経験は、正直そこまでなかった。

だからこそ、もっと途上国の人たちが知りたくて国際協力の道を目指して見たいと思ったんだけど、JICAから内定をもらえなかったら正直そこで想いは一瞬消えてしまっていたかもしれない。

だから学生時代に、もっと途上国の人たちと近づくことができて、もっと彼らとその一つの目標に向かって一緒に頑張ろうっていう行動ができていたら、例えば就職活動の時にもっと迷わず僕は彼らのために働きたい、彼らと一緒に働きたいって胸張って言えたんじゃないかなって思う。

そう考えると、国際協力に本気で取り組んでみたいって思う大学生には、ぜひ焦らず時間をかけて途上国の人たちに触れる経験をして欲しいと思うかな。

ーー開人さん自身は長期インターンや東南アジア周遊の経験をお持ちですが、休学はしていないですよね?もう一回学生にもどったら休学も考えますか?

結構難しい質問だね。

例えば海外で1年活動するって色々障害があるよね。

分かりやすいポイントとして、やっぱりお金がかかる。休学するにしても、大学によっては年間何十万円っていう学費を納めなきゃいけなかったりもするし、海外で挑戦する上でも現地で暮らす生活費もかかってくる。

今だったらそのトビタテ留学JAPANをはじめとした海外で挑戦できるための奨学金や仕組みはすごく整備されてきてると思うんだけれども、それでも必ず合格できるわけではないし、家庭の事情や他の都合で海外に行けないって人もきっといると思うから、必ずしもみんなが休学した方がいいと思っているわけではないよ。

ただ、みんなと比べて1年大学を卒業するのが遅くなるっていうことに関しては、正直そこまで心配はないかな。 今、人生100年って言われる中で、1年大学を卒業するのが遅い、社会に出るのが遅いっていうことは本当に誤差でしかないように感じる。

それに途上国で2年や3年遅れて学校に通い始める子がいるこの現場を見ていると、学校を卒業するのが1年遅いっていうことに関しては全く卑下することじゃないし、休学の1年を使って社会人になったら一生できないかもしれない経験ができるのであれば、それはきっとすごく価値のある一年だと思うよ。

ーーなるほど。そんな休学を成功させるポイントってあるんでしょうか?

これはハッキリあるね。一言でいうと「目的意識」だね。

休学してから目的を考え始めると、どうしてもブレてしまったり、迷ってしまうことが多い印象がある。だからこそ、e-Educationのインターンは採用面接の時から、本当に真っ直ぐ前を向いて走りきれるよう目的意識には凄くこだわっているし、それが職員や他のインターン含めて皆で共有し合えていると思う。

もちろん学年によって目的意識にも差がある。例えば、大学1年生の子たちは、そもそも将来どんな働き方があるのかわからない、社会に出ることのイメージがわかないっていう子たちがやっぱり多く、一方で、大学3〜4年生は、国際協力を仕事にできるのか、本当に一生関わり続けたいのかを確認するために一年間海外で挑戦する子が多い。

だから「これが正解」ってものはなくて、自分の置かれてる状況や悩みを元に、自分にあったゴールや目的を決められるかが、休学が成功したって思えるかどうかのカギになると思うよ。

ーー最近は、ある種の「休学ブーム」とでも言うことはできると思いますが、なんとなくの休学はよくないということでしょうか?

個人的には反対かな。

休学をすると、後になってマイナスの影響が出てくることもある。例えば、どうして今大学を休んでるんだっけって悩み出したりとか、罪悪感を感じたりすることある。大学3年生であれば、周りの友達たちがみんな就職活動を始めていて、それに対して焦りを感じたりするとか、休学をしたからこそ悩んでしまうって人もきっといるはず。

だから、休学の一年間をどういう時間にしたいのか、大学に行かない代わりに自分は一体どんな経験を得たいのか、そういう目的意識がはっきりしてることが、休学を決める上ですごく大事なポイントじゃないかなと思う。

ーーなるほど。最後にあと一つだけ質問したいのですが、開人さんから見て、どんな人が休学むいてると思いますか?

これもなかなか難しい質問だね。

 

(少し考えて)

 

うーん、やっぱり自分で自分の歩く道を決められる人、自分で明日の生活を決められる人、が向いていると思うかな。

例えば、国際協力の現場ひとつを切り出しても、突然ミーティングがキャンセルになったり、突然長期休暇が始まったりとか、想定外のことでプロジェクトが思うように進まないことは本当に多い。だからこそ、ピンチや想定外の問題にぶつかった時、今の自分に何が出来るんだろう、明日自分は何したらいいかな、って逆境を楽しめる人、ワクワクできる人っていう人が、休学に向いている人じゃないかなという風に思うかな。

あと、これもケースバイケースかもしれないけど、心にモヤモヤしたものを抱えている学生を見て、休学に向いてると思ったことも何回かある。

正直休学って前向きな理由だけでなくてもいいと思っていて、このまま本当に人生の大半を決める仕事を選んでいいのかな、国際協力に関心があるかどうか分からないまま社会人になって良いのかなって悩みは休学の原動力にもなる。

他にも、人には言えないけれどもずっと心の足枷になっている部分があって、それと本気で向き合ってから社会人になりたいっていう想いも決して間違いじゃないし、そこに社会を変えるヒントだってあるかもしれない。

具体例を紹介すると、e-Educationのインターンは必ずしも国際協力を志す人だけではなくて、例えば将来は日本の地域を盛り上げたい、でも昔から国際協力にも関心があって、いったい自分にとってどっちが大事なのかわからない、みたいな学生もインターンに来てくれるんだよね。

そういう子が感じてるモヤモヤって、すごい可能性を秘めている可能性もある。だってさ、国際協力×地方創生みたいな切り口で就職活動しても、きっと「これだ!」って思える会社にはなかなか出会えない。

でも、そんな可能性があってもいいんじゃないかと思って1年間インターンしてみて、その想いが消えなかったり、もしくは逆に増えてくるのであれば、それは新しい仕事を作るヒントになるかもしれない。

選択肢がない。これだって思えるものが見つからない。だからこそ休学して、自分なりの目的意識を持って毎日毎日足掻いてみる。これだけでも凄い価値があると思うし、社会を変えるヒントが詰まっているかもしれない。

だからこそ心にモヤモヤを抱えてる人は、休学というか、その足を一回止めて、自分自身と徹底的に向き合う時間があってもいいんじゃないかなと思うんだよね。答えになっているかな?

ーー凄く腑に落ちた気がします。ありがとうございました、またインタビューさせてください!

 

編集後記

開人さんのお話を伺ってると「休学」というのは国際協力の文脈では原体験得るためという一面を持つ一方で、「自分と向き合う時間」であるという印象を強く受けました。

僕自身、3年前に半年間インドネシアに渡航していた時は実は休学せずに海外インターンをしていたのですが今思い返すとそれは「経験」のためだったと思うことがよくあります。

しかし、現在休学して再び海外にいる今は、この「自分と向き合う時間」というのを日々実感しています。休学という選択を取ってから自分自身と本音で話ができているという感覚をつかむことが多くなり、いままで隠れていた自分と話ができているようです。

サクッと選択できてしまうと憧れだったり見栄だったりといった感情に本音が隠されていしまいますが、様々な選択肢と比較して休学を選んだからこそ現れた意義なのかなと思います。

そんな「自分と向き合う時間」をすごして自分の素直な声に耳を傾けられるからこそ、人生を変える休学となるのでしょう。

それでは、開人さん、あらためて本日はありがとうございました!

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